竹村現在「実行の4つの規律」を導入いただき、プロセスを実践いただいていますが、もともとは『7つの習慣』を読まれたことがきっかけでしょうか。
山室フランクリン・コヴィー・コンテンツのなかで最初に手に取ったのは、『第8の習慣』でした。当時は、ある施設の責任者になった頃で、まったく異なる業界からきた自分にとって、「どう人を活かすか」ということに悩んでいた時期でした。
竹村リーダーシップのスタイルを変えなければいけなかった。それで『7つの習慣』ではなく『第8の習慣』だったのですね。その後、改めて『7つの習慣』をお読みになられたときの印象はどうでしたか。
山室「主体的である」「終わりを思い描くことから始める」から始まる『7つの習慣』ですが、一つひとつがたしかにそうだと納得できることばかりでした。今までは、漠然と、きっとこんなことをやればいいのだろうと自分の中にあったものが、一つひとつカテゴリー別に何をしたらいいのかが7つにきれいにまとめられていました。しかも、私的成功から公的成功にいく順序が明確に出ており、すごく良いものだと思いました。
竹村目新しいものというより、中身そのものはいろいろなインプットがすでにおありで、「7つの習慣」はそれぞれの習慣ごとに、また大きなところでは「私的成功」と「公的成功」に順序だててまとめられている、整理されていることに、共感され、ご納得されたということですね。
山室そういうことです。もともとWin-Winという言葉に馴染みもなかったですし、Win-Loseの世界の中で、どう競争に勝ち抜いていくかということばかり考えていたわけです。それではどちらかが勝者でどちらかが敗者になるので、結果的に続きません。スタッフと会社もそうですし、会社とお客様、あるいは同業者もそうです。みんながWin-Winになる関係をどう作っていくかということが、非常に新鮮なテーマになりました。それを実現していくことで、今までにない結果というものが得られたような気がするのです。
竹村しかし、Win-Winといっても、現実の組織のなかで実践していくことは、簡単なことではありません。
山室本当に難しかったです。正しいことを伝えても、やる気につながらない限り、実行に移されることはありません。しかし、無理なことだと思えることでも、自分が理解してもらっていると実感することができれば、行動を変えることができます。
竹村ロジックで説明して、それで実行してほしいところですが、ロジックだけではなくて、ハートがついてこなければ、行動に落とし込まれることはない。そして、そのハートに関しても、けっきょくはその仕事の内容のこというよりも、自分のことがきちんと理解してもらえているかということがモチベーションになるということですね。
竹村そのように長く『7つの習慣』と『第8の習慣』にお付き合いいただいて、「実行の4つの規律」と最初に接点を持たれたのはどこだったのでしょうか。
山室ちょうど私たちのグループが次のステージに向けて取り組まなければいけない課題としていろいろ考えていた時期でした。タイミングよく、「実行の4つの規律 エグゼクティブ限定ワークセッション」の案内をいただいたのがきっかけです。
竹村テーマとしては「戦略実行」、新たなステージへのチャレンジに向けて、どれだけきちんと実行できるかというところでしょうか。
山室これは2018年の話ですが、私の父親から私に世代交代をするという年でした。今までの父の経営のやり方と私のやり方は違います。父には父の、先達の経営者のパワーがあって、父は一人で何人分もの役割を担ってグイグイみんなを引っ張っていくような、カリスマ的な存在でした。会社を引き継ぐとき、「俺を超えろ」という話をされたことがありましたが、そのときは「私は超えません」と言いました(笑)。実際に、超えることはできません。創業から30年、一人で苦しみながら、耐え抜きながら、会社を発展させて、みんなを引き連れてグイグイ引っ張る。あのパワーは私にはありませんし、そのような経営スタイルは私には無理です。
しかし、先代に対して「負ける」ということではなく、先代の経営者には先代の経営者の良さがあるし、私には私にしかない良さがあります。私は、チームを作って、みんなの総合力で今までよりもさらに発展させようと思っていましたから、何年も時間をかけながら、「経営チーム」的な組織を作り上げることにずっと取り組んできました。
竹村そこで、一人の人的パワーで引っ張っていくのではなく、組織のなかでシステムとして、協力体制をつくりながら、事業を進めていくスタイルに変革しようとされたわけですね。
山室そうです。そして、その後ある程度の形はできてきましたが、同時に目標を確実に達成していかなければなりません。世の中にはさまざまなフレームやコンサルティング・プログラムなどのコンテンツとして目標達成を支援してくれるものがありますが、どれも腹落ちすることはありませんでした。どれも同じような内容で、「こういうものを使いましょう」「定期的にこういうことをやっていきましょう」というもので、単純なシステム的なものはあるのですが、腹落ち感がありませんでした。
ところが、「実行の4つの規律」は違いました。主体はあくまでもスタッフであり、スタッフが積極的に関わっていくことを大切にしていると感じました。竜巻の中で新しいことに取り組まなければならないからです。行動変容はトップダウンでやってもうまくいきません。あくまでも現場の人たちが日頃の竜巻を理解して、その中でやらなければいけないことをきちんと理解したうえで進めていくことが必要です。
また、遊び心を取り入れているということにも感銘を受けました。私はそこに一番共感しました。例えばスコアボードです。それぞれが独自にスコアボードを作成し、つけ方も工夫します。今回、私たちの成果物を初めてみましたが、面白いことを考えるなと、こういう良いものを持っているのかと、今まで知らなかった才能を再認識する機会になりました。これはすごく面白かったです。
竹村この点は、世のプログラムとまったく異なるものです。よくある、スコアボードはマネジメント側が使うものです。マネジメントとして、いわゆるチェックをするものです。「実行の4つの規律」のスコアボードは、あくまで「行動を促すスコアボード」です。自分たちで作るものであって、リーダーが発想するようなものではありません。
山室次期幹部候補の育成というテーマもずっと持っていました。。「実行の4つの規律」の実践は、コーチを幹部候補として育成する機会にもなります。自分が任された仕事はみんな理解できるのですが、コーチは、目標を達成するためにまったく違うところから課題に関わります。自分のチームではなく、ほかのチームを動かさなければならないからです。当然のことながら視野が広くなります。過去の知識を教えるというのが今までありがちだったリーダーの役割でしたが、そうではなくて、参加しているメンバーが何を考え、どういうことをやっていきたいかを後押しする、それがコーチに成長してほしかった部分です。本来求めているリーダーシップを疑似体験できるような場面になるわけです。この体験を通じて、自分の担当部署に戻ったときに実践する。次期幹部候補として勉強する良い機会になっていると思っています。
竹村たしかに、それぞれの現場のリーダー、現場の方々が自分たちで主体的になって考えて行動していくときに、その行動の内容そのものはラインの皆様方がお持ちになっているものですが、それを「4つの規律」という仕組みを使ってやっていくわけです。その「4つの規律」という仕組みそのものを一番理解しているのがコーチです。「4つの規律」に当てはめてみて、もっと効果的になるためにはどうすればいいのかをインストラクションできる人物です。
もっと別のパラダイムでいうのであれば、日常業務が忙しく、いわゆる竜巻状態になってくるところを、どのように「4つの規律」を使って戦略的な仕事の仕方をするかということです。コーチは戦略的な仕事の仕方を学ぶことができます。今度は自分自身がそうした役割になったとき、その戦略的な仕事の方法を取り入れた際、どのようにやっていけばいいのか、非常に扱いやすくなると思います。われわれのお客様の中でも、誰が一番成長してキャリアが変わっていくかというと、やはりコーチです。
山室そこを本当に期待しています。まずコミュニケーションの機会が広がりますし、幅も広がります。今まではいつも決められたスタッフとの会話しかなかったのが、違う事業所でもコミュニケ―ションが取れるようになり、違う視点でコミュニケーションを取るようになるので、コミュニケーションスキルは確実に上がっていくと思っています。